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昨年は1868年の明治維新から数えてちょうど140年であった。
最近は、創設100周年を祝う社会福祉施設や団体の記念式典が各地で開催されている。
100年に一度といわれる経済不況で多くの事業体が崩壊に直面している中で、我が国に戦前、戦後の大動乱の歴史をかいくぐり1世紀の歴史をもつ社会福祉事業体があるということは特筆すべきである。
この歴史を振り返ると幾つかの特徴を学ぶことができる。
例えば、140年の歴史のうち明治・大正・昭和の戦前という前期にあたる約70年余は、慈善事業や社会事業という民間が主役の時代である。
これに対して昭和の戦後と平成という後半の歴史は、公的責任による福祉の時代である。
この後半の時代もさらに二つの時期に分けてみることができる。
前期は民間社会福祉事業、社会福祉法人が生き生きと輝き、地域のニーズを受け止めていていた時代
後期は行政の指導に縛られて「経営」にあけくれて法人が自由を失った時代である。
前期の主役は敗戦で巷に戦災孤児や浮浪者、傷痍軍人が溢れた貧しい時代に社会福祉事業に立ち上がった青年たちである。
その多くは学徒出陣や特攻隊から帰ってきた青年たちであった。
また、結核患者や戦争未亡人、障害者の親の会など当事者と保護者が社会福祉施設の創設や予算対策に立ち上がった。
こうした背景のなかで社会福祉協議会も予算対策や地域福祉活動、在宅福祉サービスの開拓など民間から現代の地域福祉の原形を創出した。
ところが後半、とくに西暦2000年(平成12年)に介護保険法や社会福祉法が施行され、その後に障害者自立支援法が実施されて以降の社会福祉法人は、全国的に社会福祉施設も社会福祉協議会も生気がみられず、運営が画一的、効率的になりおよそ民間性の先駆性、開拓性というものが感じられないところが多くなった。
何故だろうか?
振り返ってみればもともと社会福祉法人という制度は、国家責任による福祉の措置委託先として憲法89条に抵触しない公の支配に属する法人として創設された本質を持っている。
しかし、法人運営の背景には市場原理を優先とする経済社会状況への変化があり、そのもとで少子高齢社会に対応する事業体の経営の基本は効率が最優先価値とせざる得ない時代を迎え、公が変質したことが何といっても大きい要因だろう。
また事業体の主役の使命感の強い人物像がすっかり代わってしまったことも大きい要素である。
ではこれからどうしていけばよいのだろうか。
行政の指導のままに言われたことだけを「経営」する社会福祉法人でいいのだろうか。
行政は官であるが、必ずしも公ではない。
公は官、民、協、私のあらゆる領域で追求されるべき課題である。
我が国の民間社会福祉は、もう一度、地域のニーズと向かい合い、地域の住民と手をつなぎ、新しい実践を開拓する生き生きとした社会福祉事業体を取り戻し、官民協私の「新しい公」を発展させる牽引車になる必要がある。
そこで提案がある。
社会福祉法人という機構が、もともと公的責任を受託する機構であることを再確認し、思い切って社会福祉法人がより自由なNPOや一般社団法人、一般財団法人を併設して、地域の住民と手を握り、新しい地域のニーズにチャレンジしてみてはどうだろうか。
我が国の社会福祉が民間性を取り戻す戦略とは民協私が主体となった新たなる公を創出することにあると考えてみるべきである。

2009年2月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第59号
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2009.09.09 Wed l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
先般、障害者30名が8地方裁判所に障害者自立支援法が憲法25条違反だとして提訴した。
この12月には社会保障審議会で法改正に繋がる論点がまとめられることになっている。
その主要な論点は、
①相談支援
②就労自立支援
③障害児支援
④障害者の範囲
⑤利用者負担
⑥報酬
⑦サービス体系、障害程度区分、地域生活支援事業などに関する個別論点
の7点である。
いずれも重要な課題だが、障がい者にとって最大の課題は、利用者負担と障害程度区分である。
この二つは、障がい者の生活と今後のサービス質量を決めるニーズ判定に直結するからである。
前者については、既に国が3年間で1200億円の特別対策を講じ、定率負担を10%から3%に修正したが、後者は課題として残されている。
K・ジャッジは、利用者負担の目的は、
①歳入の増加
②需要の削減
③優先順位の変換
④濫給防止
⑤象徴効果(誇りを持ってサービスを受けること)
と指摘している。
財政学的には応益負担は、一般国民が享受している水準を越えた受益、開発などによって得られた利益があった時に適用される概念である。
障がい者へのサービスは受益ではない。
現実に月10万円以下の障害福祉年金、平均12,900円程度の授産収入、民間事業所の義務的な障害者雇用率がまだ1.8%未満である障害者の生活実態から考えれば、百歩譲っても⑤の象徴効果しか正当性をもち得ないといわざると得ない。
しかも重度者ほど負担が高くなる定率負担(応益負担)はマイナスの象徴効果そのものである。
受益者負担を介護保険と同じ定率負担といいかえても無理がある。
応益負担(定率負担)は國際障害者年でWHOが示したICFの社会モデルを国の政策理念とした見解と明らかに矛盾し、障がいを増幅する原因は社会の側であって、障がい者自身の責任ではないという国民的、世界的な認識を無視するからである。
障害者自立支援法は、社会福祉基礎構造改革の第一楽章である介護保険に継ぐ第2楽章である。
第二楽章は社会福祉基礎構造改革の全体の印象を連想させる重要な章である。
しかしその主調音は、障がい者自身による裁判提訴や法律廃案運動を引き起こし、前代未聞の不協和音の楽章となった。
何故か。端的にいえば障がい者の生活の実態を掬いとった楽譜(政策)ではなかったからである。
何故、現実の障害者の生活実態と乖離したか。
ひとつには日本の政策の意思決定過程の二重構造にある。
画一的な財政削減を図る財務省と、その意図を呑まざるを得ない各省の上下関係の統治構造にある。
もうひとつには政策に命を吹き込む民意の回路を各省とも持ち合わせていないからである。
昨今のおぞましい事件の多発は、これらの構造がもたらす国民の閉塞感と無縁ではなく、問われるべきは当事者の民意を反映する透明な政策決定システムの確立である。

2008年12月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第58号
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2009.09.08 Tue l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
アメリカのサブプライムローンに端を発した大手のリーマン・ブラザース証券会社の破綻の原因は、金融活動の原則から逸脱し、カジノ的な市場原理主義に堕した結果といえよう。
ある意味では牛肉の「生産性」をあげるために使用された牛の骨粉飼料で発生した「狂牛病」が、限りのない利益を求める金融市場にも発生したと言えなくもない。
今回のアメリカの金融破綻を引き起こしたロジックは、市場原理主義である。
それは、金融市場だけではなく、世界の経済、政治、社会システムの基底に影響を与え、わが国の福祉政策の背景にも一貫した原理として一定の影響を及ぼしている。
しかし、想い起こせば第二次世界大戦後の世界の国々や日本においては「戦争国家」に対して「福祉国家」の理念を掲げ、市場経済では対応することの困難な社会問題を解決するために
①貧困
②疾病
③教育
④住宅
⑤雇用
などに関する福祉政策を確立した。
そして「ゆりかごから墓場まで」の社会保障制度を確立する一方で、他方でそれを活用して人間の生きる力を発展させるソーシャルワーク機能を拡充し、国民的合意のもとに人間の尊厳を第一義とする福祉原理を打ち立ててきた。
その結果、経済市場と福祉政策を組み合わせた効率と公正のバランスのとれた福祉資本主義を形成してきたのである。
ところが最近の日本は、発達した社会保障制度がありながらも、自殺、虐待、ドメスティック・バイオレンス、無差別殺人などの新たな異常な事件が相次ぎ、これらの背景にワーキングプア、介護など深刻な社会問題が横たわっていることを認識する必要がある。
こうした状況を生み出す要因のひとつに「発達した社会保障」と「遅滞したソーシャルワーク」とのギャップがある。
これらの問題は社会保障制度の量的拡大だけでは解決できず、人間の生活の全体性に目を配り、人間の生きる力を個別に支援するソーシャルワーク機能の充実が不可欠であることを示している。
しかし、日本には21年前に世界に先駆けてソーシャルワークを担う国家資格の社会福祉士制度が確立され、11万人余もの資格者が生み出されているが、未だその社会的な活用にスポットライトが当てられていない。
近年の労働環境の悪化で、福祉人材の確保策が軽視され、若い有為な人材が福祉現場や福祉系大学の進学に向かわず、人気を落としている状況はまことに遺憾に堪えない。
いま、国民の最大の関心事は、社会保障制度の充実とそれを左右する総選挙の行方にある。
中長期的に福祉社会を支える福祉原理の重要性に改めて目を向け、ソーシャルワーク機能の充実に国民的関心がもっと払われるべきである。
歴史的にみれば市場原理は、いわゆるポランニーの「大転換」で指摘しているように、たかだか400年間ほど地球を支配してきただけで、人類の有史以来の極めて長きに渡って培ってきた互酬、再分配などの社会連帯の原理を引き継ぎ、人間の生存を保障してきたのは福祉原理なのである。
福祉原理は人類誕生からの原理というべきもので、人間の尊厳、すなわち人間の存在そのものに価値があるとする原理で、その価値を具体化してきた知恵と技術の総体がソーシャルワーク機能として発達してきた。
とすれば、今日の尋常ならざる社会問題に対して、単に社会保障給付の量的拡大を求めるだけではダメであり、また他方で財政的視点からのみ社会保障給付の抑制を求めるのはなおさら見当違いである。
重要なことは、制度をフルに活用するソーシャルワーク機能を拡充し、またその機能を使命とするソーシャルワークを担う11万人の社会福祉士を活用し、人間の不幸に直面するあらゆる職域においてその任用の仕組みを制度化することが喫緊の課題であると考えるものである。


2008年10月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第57号
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2009.09.07 Mon l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
秋葉原の通り魔事件は日本中を震撼させた。
この事件の背景についてさまざまな見方が披瀝されているが、注目すべきはいち早く国が不安定な非正規雇用労働の実態が反映しているとの認識を示し、9月には人材派遣法の日雇い雇用制度を原則禁止の方向で改正しようとしていることである。
前年の北九州市の生活保護受給者の餓死事件は生活保護行政の運営の基本方針を変え、4月には厚生労働省から漏給防止について異例の通知が全国に示されたのもこの文脈にある。
しかし一方では、朝日新聞の調べによれば06年度の全国の福祉事務所の窓口での生活保護の申請率は全国平均で44.7%にとどまり、生活保護を申請させない「水際作戦」の実態が明らかにされ、上記事件との因果関係が立証されつつあるのも現実である。
現在、人材派遣制度、年金制度、障害者自立支援制度、後期高齢者医療制度、生活保護制度など国民の労働権、生存権に関する重要な制度を巡ってさまざまな綻びが露呈しつつある。
これらの問題を考えるにあたって共通する課題は、単なる事務的な過誤という段階を超えて、殺人、自殺、孤独死、虐待など人間の生存までを破壊し、修正不可能な問題にまで発展しかねない様相を見せはじめているとの認識が必要である。
すなわち、これらの現象を社会変化がもたらす偶然性の結果として捉えるか、政策の変数の総和がもたらす結果として捉えるかが問われているのである。
社会福祉政策の綻びの要因は、政策決定構造の二重構造と行き過ぎた市場原理の重視にある。
現在、国の政策は財務、総務省を軸とする政官業学から構成される「経済財政諮問会議」のもと経済財政の構造改革に偏重した統治システムにある。
自民党の元厚生労働大臣の尾辻哲郎氏が本会議で「問題の根源は経済財政諮問会議の一律の予算削減にある」と喝破したが、各省の正統な主体性が活かされる政策決定システムの再構築が必要だ。
これらの諸問題は人間の尊厳にかかわる勝れた社会福祉政策の課題であり、その政策評価は、国民の生活実態から逆照射する視座が重要である。
このため政策と技術、換言すれば社会福祉政策と人間の全体性に目を配るソーシャルワークがリンクする政策立案手法の開発が必要である。
そこで社会福祉政策の立案にあたっては、次ぎの4点を提案したい。
第一に、社会福祉政策の制度設計は、国民に十分な説明責任と合意形成を前提とすること
第二に、社会福祉政策は、人間の尊厳にかかわる政策であり、憲法25条による福祉原理を最優先されるべきこと
第三に、社会福祉政策は、ソーシャルワークの実践のモデルを踏まえること
第四に、上記の政策評価は、価値共有化を基本とする新しいシステムでモニタリングされること
例えば、先般「わが国におけるソーシャル・ケア・スタンダード構築のための日米英のモデル比較研究」(代表:大橋謙策)が公表され、その中で英国のケア基準法(2000)の遵守について、ソーシャルケア従事者と雇用主が行動規範の共有化がサービスの質を担保すると分析されており、日本においてもこれを発展的に導入することが大切だ。
具体的にはこのシステムを一歩進め、社会福祉政策の立案と実践にあたっては、立案者、雇用主、従事者などが共通の行動規範を共有化することを求めたい。
熊本済生会の須古院長はかつて、
「医療には多数の職種があるが、患者さんのことを第一義に考える専門職はソーシャルワーカーだ。ソーシャルワーカーが患者さんについて必要だといったことは全て聴くべきだ」
とソーシャルワークの重要性を語っていたが、正統な社会福祉政策と技術がリンクするシステムの再構築は喫緊の課題である。

2008年8月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第56号
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2009.09.06 Sun l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成19年11月からはじめられた厚生労働省の研究会「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」(座長:大橋謙策)から2008年3月31日付けで『地域における「新たな支えあい」を求めて-住民と行政の協働による新しい福祉』が公表された。
中央と地方の格差が進行する中で、行財政構造改革に伴う地方分権化と民営化の潮流は地域において様々な複雑多様化した生活課題を発生させ、今ほど地域における支えあいが求められている時期はない。
このような状況を踏まえて地域での支えあいを構築するためには住民参加と地方自治体との柔軟な協働を提案するこの報告書は真に時宜を得たものといえよう。
この報告書では、5層にわたる重層的な福祉ネトワークを構築し、人口1万人の中学校区を単位として、保育所経費を除いて約40億円の保健医療・福祉・介護の社会資源、全国では約4兆円、を投入しているモデル図を示している。
これまでの縦割りの属性別予算構成から、地域に着目した横割りの面的な地域福祉型予算構成とも読みとれ、今後、基礎自治体における地域福祉型予算に組み替えることの必要性を示唆しているかのようである。
この報告書で重要なことは、「この支えあいのシステム」を
①誰が
②どこで
③どのように
推進するかについての記述であるが、必ずしも明確ではない。
報告書の中ではコーディネーターの必要性がうたわれ、サービスの調整役とし描かれているが、孤立する家族や当事者に寄り添いながら個別的な問題の解決に向けて自立支援を図ることをはじめとして、地域づくりや住民間の課題の調整役、サービスや制度間の調整、さらには社会環境の改善も含めてよりクリエイティブな専門家としての役割を期待すべきである。
このコーディネーターは、地方自治体、市町村社会福祉協議会、ボランティア団体(NPOを含む。)、民間福祉団体等にも配置が必要である。
さらに重要なことは、このシステムのキーステーションはどこかである。
本会としては、基礎自治体を中核拠点として、多元的な機関や団体をネットワークし、地域包括支援センターをはじめ各種相談機関を統合したソーシャルワークセンター(仮称)の設置を提唱したい。
この運営実践主体は、基礎自治体をはじめとして、市町村社会福祉協議会、公益法人など多面的に検討されてよいだろう。
このため、現行の1951年に設置された福祉事務所制度を抜本的に見直す必要がある。
そしてこのセンター構想は、住民参画を前提として、基本自治条例に基づき公私の地域福祉計画、地域福祉活動計画を統合し、総合的に運営・経営・進行管理されることが重要である。
既に全国には先駆的な地域の実践が多様に存在しており、これらの実践を発掘し、総括しながらサービスの実施主体に、NPO活動や各種のボランティア活動、自治会・町内会、コミュニテイ協議会に加えて、地方自治法の改正による「地域自治組織」なども活用されるべきである。
重要なのは財源であるが、上述した制度上の財源を地域福祉型予算の組み替える他、新たな寄付文化の振興が重要である。
中でも共同募金は提案のように現在の都道府県共同募金会に集めて配分する方式を改善し、市町村共同募金会をつくり自らで集め、配分できる仕組みが急務である。
1967年の共同募金会に関する行政管理庁による勧告は、人件費の使用を禁止したが、税や社会保険料はモノ、カネ、ヒト等に使用されており、あらためて公金使用の原則を再確認さるべきである。
パターナリズムとしての中途半端な禁止は、地道な地域の取り組みをむしろ遠ざけるものとなり、人々の関心を引きつけにくくなり、民間活力を奪ってきたといっても過言ではない。
したがって企業をはじめ各種寄付文化の抜本的振興や税制改革により地方自治体への自治財源の委譲が重要である。

2008年6月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第55号
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2009.09.05 Sat l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
社会福祉の内部に大きな格差がある。
高齢者福祉のように人数も多く、年金や医療、福祉の予算規模の大きな分野は、政治的にも注目されるし、なによりも当事者が選挙民として発言できるので、たえずマスコミのとりあげるところとなり政治問題化する。
障害者福祉も当事者と保護者が大きな役割をになって社会的に運動を展開する。
こうした背景で、これらの分野では予算措置はそれなりに前進をする。
ところが児童福祉、特に乳児院や児童養護施設に保護されている児童家庭の問題は、本人はもちろん家族も社会的に発言することはほとんどないので、その問題は社会から無視されつづける。
戦後半世紀以上を経ているのに、まだ敗戦直後のような状態が放置されていて愕然とする。
例えば、最近私が理事を引き受けたある児童養護施設は、定員60名であるが、夜勤の勤務は幼児から中学・高校生までの児童30名に1名の保育士であるという。
思春期の難しい問題を背負って入所してきた子供たち30名を1名の職員でどう対処するのだろう。
数十年前の配置基準がそのままになっている。
昨年末、理事を引き受けたのでまず施設を見せてもらいに行きびっくり仰天をした。
施設は昭和27年に設置された当時のまま荒れ果てて老朽化が激しく、子供たちの4人部屋は寒々として、なかにはスプレーペンキで大きな落書きがしてある部屋もある。
ここまで放置してある社会福祉法人というのは、いったいどういうことかと考えこんでしまう。
これほどひどい状態の児童施設がまだあったのかとびっくりしていたら、同僚に県内にはもっとひどい施設があるといわれた。
さらに調べたら全国には老朽施設がたくさん存在するといわれてわが身の不勉強を恥じた。
例えば、下泉秀夫氏の「老朽化する児童養護施設ー施設調査から」2004年によれば、
①全国の児童養護施設の51%は、いまでも大舎制をとっており、すべての中学生、高校生に個室を確保できている施設はわずか19%である。
②トイレは、17%の施設が男女共同である。
③浴室は、43%が男女共用。
④居住用の建物は、1960年代の建築が27%,1970年代が35%,1980年代が16%で、全体に非常に老朽化している。
自由記述を読むと、
①入所児童の多くが被虐待児童であり、小児精神科を受診しているものも多く、プライバシーというよりも興奮時にクールダウンさせる個室は必須であるが、その部屋がなくて苦労している。
②子供がひとりで泣きたいときに泣ける部屋がほしい。
③高校生が、受験勉強をできる個室をぜひ確保してあげたい。
④児童1名当たり3.3㎡の基準では、個室の確保はできない。
いまから40数年前、私は都内の少舎制の児童養護施設で社会福祉実習を経験した。
それは当時のホスピタリスムス論争をふまえて、児童養護がコッテージシステムに展開をしていたからである。
その後、街のなかにグループホームを展開する施設も現れた。
そのときから半世紀近くもたって、いまだに足踏みしているというのはどういうことだろう。
監査で実態を承知していながら児童を措置しつづけている行政にもあまりの無責任ぶりに怒りを覚える。
日本の社会福祉はほんとうにこれでいいのか。

2008年4月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第54号
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2009.09.04 Fri l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
社会福祉士法が2007年12月末に改正されたが、この改正にあたって衆参両議院で付帯決議された
①社会福祉士の任用と職域の拡大
②社会福祉士の専門的力量の強化方策
は特筆されるべきである。
新たな福祉・介護サービス供給システムを支える中核的人材が社会福祉士であることを国会が明確にしたことを意味するからである。
これに先立ち、2007年7月に14年ぶりに厚生労働大臣が「社会福祉人材確保指針」を示した。
1990年以降の行財政改革の潮流のもと、市場原理の貫徹する労働市場において一層の規制緩和が促進され、人材派遣法で専門職種に限定していた規制も原則自由化され、すべての業種の非正規職員の雇用の常態化が一般化した。
社会福祉分野でも例外ではなく、社会福祉基礎構造改革で掲げた新たな理念、制度、システムを支えるべき福祉・介護サービスに従事する人材が非正規職員化の割合を高め、特に介護の分野でその影響が深刻である。
このため指針は、福祉・介護サービス従事者328万人の労働環境の整備を最優先課題に掲げたが、一方では市場原理に沿った労働力の非正規職員化政策と今回の福祉原理を掲げた指針の内容を具体化する政策をどのように矛盾なく実現していくかその動向が注目される。
社会福祉士は今や10万人を超えるが、その任用状況は、まだ福祉事務所で3.9%、社会福祉施設で6.2%、介護保険事業では、18.5%と社会福祉士法が制定されてから20年も経過するのにその任用が遅々として進んでいない。
その背景には社会福祉主事制度との関係がある。
社会福祉行政の実施については組織を通じて規制機能と問題解決機能の両立を踏まえた統治システムの確立が重要である。
社会福祉主事制度は、戦後、占領軍の6項目指示により福祉事務所の運営にあたって有給専門吏員の配置の必要性の指示を受け、専門性機能を付与された制度であったが、現代では大学卒で三科目の履修でとれる資格になり、一般的に三年毎に異動する公務員の人事シフトと相俟って、実定法の詳細な通知通達によって専門性による問題解決機能よりも規制機能を温存してきた経過がある。
しかし、近年の少子・高齢社会の急速な進行を背景とした毎日のようにマスコミで報道される虐待、DV、いじめ、自殺、孤独死などの事件は、換言すれば、家庭、学校、職場、地域、行政などの統治は規制機能の強化だけでは対応できず、専門性による問題解決型の統治が喫緊の課題となってきたことを意味している。
マックスウエバーは官僚制(組織)を統治するのは専門性と指摘し、その統治性を支えるのは正統性の原理が必要であるとした。
現代の正統性の原理に支えられた統治とは、多くの人々の知恵を集約し、それをエビデンスとした専門技術といってもよいだろう。
このような意味で社会福祉士の役割は、ミクロ、メゾ、マクロの包括的な関連を視野に入れ、地域を基盤として所属する組織の新しい統治性を支える住民や多様な主体の参加を得た共治性のガバナンスを形成する職種と考えられてよい。
おりしも、この国会の付帯意見を踏まえて、ソーシャルケア従事者研究協議会、日本社会福祉士会、日本社会福祉士養成校協会は、厚生労働大臣をはじめ全国の都道府県知事、教育長、市町村長に社会福祉士の任用・職域拡大について画期的なソーシャルアクションを全国的に展開しはじめた。
今後はそれだけに、社会福祉士を養成する側の責務は重要である。
昨年の末に「社会福祉士養成課程における教育内容等の見直し案」が国から示され、その内容は地域福祉型というべく、国や地方自治体の政策を確実に実現する社会福祉士を想定したカリキュラムといえよう。
このため、社会福祉士に関する養成・任用・確保に関系する国、地方自治体、事業者、福祉・介護サービス従事者、大学、学会等における価値の共有化への取り組みは重要である。
その価値とは、今回の法改正でも示された人間の尊厳に関する価値であり、人類の歴史と世界のスタンダードに支えられた価値でなければならない。


2008年2月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第53号
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2009.09.03 Thu l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
「おにぎりを食べたい」と書き残して、北九州市のもと生活保護受給者が餓死した事件めぐって生活保護行政のあり方が大きな問題となっている。
たまたま日記が残されていたところから、400名余の弁護集団がつき、市の福祉事務所長を告訴した。
国民のセーフテイネットであるべき憲法25条と生活保護法第一条の福祉原理を踏まえた生活保護制度の変容をかいま見せた事件である。
この事件は、1973年のオイルショック以降の格差社会の進行、とりわけ1000万人のワーキングプアの存在、300万人の生活保護基準以下の低所得者の存在、自殺者38千人のうちの4割が経済的原因とする事実、これらの最先端に今回の餓死者が発生した事件として考えるべきである。
この10月に北九州市生活保護検証委員会は、三件の餓死事件に関する事例を綿密に検証し、その結果について中間報告を行った。
生活保護行政の「入り口」と「出口」に問題があるとし、八つの改善意見を具申し、「社会福祉職」の採用、ソーシャルワークの導入などを提案し、過日、国会でもその必要性が取り上げられた。
「入り口」と「出口」の問題とは何か。
一言でいえば生活保護営システムの機能不全運である。
システムの機能不全は何故起きたか。
2000年以降、グローバルな経済環境の変化と日本の少子・高齢社会の急速な進行は、ハイテンションな行財政改革を促し、「骨太改革指針」のもと、社会福祉分野も例外ではなく、憲法25条の福祉原理を踏まえながらも増大するニーズに対応して市場原理を導入した新たな福祉・介護サービス供給システムを創出した。
介護保険法と障害者自立支援法がその具体版であるが、前者は行き過ぎた市場原理を優先したコムスン問題や若い介護従事者の介護離れを引き起こし、後者は障害者の生活実態と乖離した制度として政治的問題に発展している。
今回の餓死事件は、行財政改革の一律の社会保障費削減政策が生活保護行政分野にも現われたというべきで、上述した問題と地続きの問題である。
2004年12月に報告された社会保障審議会からの「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」は、「利用しやすく自立しやすい制度へ」をキャッチフレーズとし、生活保護法の「経済的自立」に偏った「自立助長」の目的を2000年の社会福祉法の自立と共生の理念に置換し、
①就労支援
②日常生活支援
③社会生活支援
の三つを取り入れ、小山進次郎が名著「生活保護法の運用と解釈」で示した志の高い自立助長の思想を実現するようかのように見えた。
しかし現実には、高齢者加算の廃止、母子加算の段階的廃止、多人数世帯基準、年齢別基準設定の見直し、さらには高齢者資産活用の見直しが相次いでいる。
とりわけ65歳以上の高齢者の不動産が500万円以上ある場合には、親族に相続されることは国民の感情に沿い難いとの理由から、この4月から原則、保護を受けることができなくなった。
さらに2007年11月30日の「生活扶助基準に関する検討会」(座長、樋口美雄・慶大教授)の報告に基づき、来年から低所得者との不公平感を解消するために生活扶助額を一人あたり、1000円ほど引き下げようとしている。
今や憲法25条と法第一条の目的は限りのない市場原理に侵食されつつあるかのようである。
貧困とは、さまざまな心理的、精神的、身体的要因や家庭、職場、地域社会などの社会的環境との複合特産物であり、保護費の削減と「入り口」と「出口」の規制の強化だけでは到底対応することが困難な課題である。
切れ目や破れ目のないセーフテイネットのバネを基盤にして、自立を支援する強力なスプリングボード-ソーシャルワーク機能を備えた仕組みの構築が重要なのである。
1993年に先進的な公的扶助従事者の機関誌に保護受給者を揶揄したと批判された「福祉川柳」が全国紙で大きく取り上げられ、公的扶助従事者の倫理が大きな社会問題となった。
この問題は関係者の処分と退職で終息したが、そこで問われるべきは機関委任事務下で起った生活保護行政の運営統治システムとそれを支えるソーシャルワーカーのあり方であるが、
具体的にはシステムを形成する
①政策理念
②財政経済政策
③社会保障政策
④生活保護政策
⑤生活保護運営管理システム
⑥福祉事務所運営システム
⑦福祉事務所の人事・職員確保・養成・異動・研修システム
⑧社会福祉専門職とソーシャルワークの専門性
⑨生活保護運営に関する住民参加
⑩専門職団体、学会等の提言機能
などの問題が問われるべきであった。
「福祉川柳」事件は過去の問題ではなく、今も引き継がれているというべきである。
ただ、一点異なっていることは、今回の事件は自治事務の統治のもとで生じた事件であるということである。
したがって、この事件は、地方自治、住民自治、地域福祉、ソーシャルワークの課題に関連させながら①から⑩までのシステムを本格的に検証することの必要性をこの餓死者は訴えているように思われる。

2007年12月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第52号
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2009.09.02 Wed l 社会福祉はこれでいいのか l コメント (0) トラックバック (0) l top
社会福祉提言委員会 2007年7月25日に厚生労働大臣から社会保障審議会福祉部会に「社会福祉事業従事者の確保に関する指針」のあり方が諮問され、原案が了承された。
指針の特色は、これまでの社会福祉事業従事者に加えて介護サービス従事者を入れ、福祉・介護サービス従事者328万人とひとくくりにした新たな概念である。
その主な内容は、
①労働環境の整備
②再就労方策の充実
③多様な人材の参入方策の充実
等であるが、今後、注目されるべき事項は①である。
適切な給与水準の確保、事業収入の職員への適切な配分、社会福祉士・介護福祉士等の配置への介護報酬の加算適用や職域拡大の提言などが盛り込まれた。
職員が離職する主な理由は、
①給料が安いこと
②雇用マネジメントが悪いこと
③仕事に生きがいが感じられないこと
の三点である。
すなわち、①の課題は、これらの三点をどのように解決するかが焦点となる。
1986年に成立した「人材派遣業法」は、当初、人手不足の「専門的な知識・技術・経験を必要とする業務」に限定されていたが、経済のグロバリゼイション化の進行に伴う市場原理の深化は、規制緩和を促し、その原則は、自由化された。
1987年の全雇用労働者のうち、非正規の割合は11.1%であったものが、2007年の4月には33.2%に達し、とりわけ福祉・介護サービスの分野は顕著で、2005年の介護職員の非正規の割合は41.6%、在宅サービス分野にあっては、52.2%に達している。
2004年の介護職員の平均給与は、全産業の平均の33万円と比較して、20.8万円とその額は極めて低い状況にある。
365日、24時間の福祉ニーズに対応するために、非正規雇用が中心になりつつある雇用形態で人間の尊厳を保障する社会システムの構築が可能であるのかどうか、今後、関係者は根拠のある説明責任が問われよう。
一生懸命に働いても生活保護世帯の基準以下といういわゆるワーキングプアを生みだしている現状では、給料の高い職種に若い有為な人材が集中し、福祉・介護サービスに従事する職員が不足するのは当然といわざるを得ない。
高い倫理観と専門性を備えた福祉・介護福祉サービス従事者の確保の核心は、それぞれの職場が、
①普遍的な理念
②希望を持てる労働環境
③職員の参画を図る雇用マネジメント
等に関して魅力ある職場づくりのための「基礎構造改革」を普段から行っているかどうかにある。
これまで社会福祉士を約10万人、介護福祉士の約56万人を生み出しながら、福祉事務所への社会福祉士の配置は、僅か3.9%、介護福祉士にいたっては、約半数が職についていない実態に対して、国、地方自治体、経営者をはじめ大学、学会、職能団体は一体となって、この現状を打開する必要がある。
戦後、日本の社会福祉関係者は、総力を結集して働く人々の労働条件をめざして予算対策運動に取り組み、給与の公私格差是正や労働時間短縮に取り組んできた。
その成果は、今、行き過ぎた「市場原理」の導入により音をたてて崩れつつある。
若者達が、魅力を感じられる職場、生涯にわたって働き続けられる職場をつくり出すために、関係者の福祉・介護人材に関わる養成・任用・確保に関するトータルなシステム構築のための創造的な取り組みが急務である。

2007年10月号 日本ソーシャルワーカー協会会報 第51号
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